対自核

セラピーの一環としての自分語り

不思議体験(後編)

 つい今しがた起きたことを自分の中で整理してみた。すると、ちょっとおかしなことがけっこうあることに気が付いた。

まず、エレベーターと自分の間が20センチしか無いのに、しかも人が乗り込めるスペースもまだそれほど無いにもかかわらず、乗り込むことなどできるのだろうか。ほとんどグレイズ状態にもかかわらず、人体が当たった感触や風の動きも無かった。
また、乗り込んだと同時に扉が閉まるなどということがあるのだろうか。いかに相手はプロと言ってもそんな裏技は聞いたことがない。

次に、そのプロの容姿が、なんだかホログラムのような感じがしたことだ。実体はあるが、無いようにも見える。ミクライブなど遥かに凌駕するレベルだった。当時、もちろんそんな技術はなかった。というか、誰がそんなマネをするのか。

そんなことは、その瞬間に気づくだろうと言われれば反論しようが無いのだが、しかしそれほど普通にさらっと起きた出来事だった。同僚も「何・・・あの人?」と声に出して言っているので、プロの姿は目撃している。
同僚は怖がりおびえてしまっていたが、「別に何の実害も無いからいいんじゃね?」と言いながら、普通にそのエレベーターに乗って上階に行って仕事をした。仕事中も同僚は離れようとしなかった。

「同じ場所を一緒にやってどうすんだよ。」と言ったが、「だって怖いし。」と言われた。たしかに怖いよなと思って、「まあそうだなあ・・・。」としか言いようがなかった。「今日帰って頭洗って鏡見たら・・・いたらどうする?」とか言うと泣きそうになっていた。ちょっと自分でも性格が悪いなと反省した。

 仕事が終わり、地下2階にある機械室に作業終了の報告に行った。そのとき、その出来事を報告する気になり、「ちょっと不思議なことあったんすけど。」と事の顛末を話した。
すると、担当の人の顔がいきなりこわばり、「知らないの?」と言われた。「は?何すか?」と聞くと、1か月前にメンテナンスの人がエレベーターから転落して死んでいたことを告げられた。

(これは裏が取れた。貴重なサンプルになるな)と思ったが、「へーそうなんすか。じゃあその人なんですかねえ。」とか適当なことを言って妙な雰囲気にならないようにした。
しかし担当の人の対応から、似たような報告をいくつか受けているような感じだった。
怖がる同僚を安心させようとして、「プロも機械から落ちる」などとわけのわからない冗談を言ったが、同僚は会社に帰るまで一言も発しなかった。

以上がそのときのすべてであるが、幻覚じゃないの?と言われれば、物的な証拠は何もないので反論のしようが無いが、同僚と一緒に見ていること、いちおう因果関係らしきものがあることから、自分の中では、”そういったこと” なんだろうと思っている。